売れるネットショップについて考えてみた

売れるネットショップについて考えてみた

クライアント様から言われるおなじみのセリフ「売れるネットショップを作りたい」

出来れば誰でもそうしたい。今回はこの件に関して「改めて考え直して欲しいこと」について触れたいと思います。

売れるネットショップに必要はものは何ですか?

これを考える上で、まずは「売れるネットショップを作りたい」と依頼を受けた際に頂く要望の中で最も多いものをランキング形式でいくつか、

  1. 売れるデザイン
  2. 売れる仕組み
  3. 売れるシステム

クライアント様によって順位変動はありますが、大体この順位が固定です。

そして私は思うのです。これは「売れるネットショップの一因ではあっても、根本ではない」と。

売れているショップは上記3つの全てにおいて一定の基準で満たしている事が多いとは思いますが、売れている実際の理由は別のところの比重が大きいと思うのです。

私の思う「売れているネットショップ」の売れる理由を、ここは商材問わずに同じく最も多いと感じるものを箇条書きで。

  • 商品力
  • 価格競争力
  • プロモーション力
  • サービス力
  • 早くからはじめてた力

どうですか?当たり前感しかないですよね。だからクライアント様も基本的にはこんな事は百も承知であるケースが多いのです。しかし、私がいちいちここでこんな事を書いているのは、この当たり前ことに気付いていない方も多いこと。そして気が付いていても…という事が多いからなのです。

日本語はすごく便利で「中身と外見」といえば、これから言わんとする事が分かって頂けるかなと思います。

ネットショップというのはただのツールです

すごく投げやりに聞こえるかもしれませんが、私は設計するネットショップというものに対しては一定のプライドも愛着心も持っています。

もちろん多くのネットショップはその設計においては機能やデザインを十分考慮されているはずだと思ってます。私自身も提案時には心がけていることがいくつかあります。「ご担当者様のITスキル(普段はITリテラシー、もしくは単にリテラシーと言ってます)」や「ご担当者様の人数」、それから「事業に掛けられる労力配分」などを入念にヒアリングします。

労力配分というのはより具体的に言いますと「ネットショップ運営に専任がつくのか、もしくは他の業務と兼業なのか?」ということです。多くの方は後者の兼業でという回答ですね。比較的大きな企業の一事業という場合もそうですし、路面店で働きながらネットショップもという場合もそうです。多くの方ケースでそのご担当者様がネットショップに関われる時間はかなり限定的な印象です。

ですから、設計の段階からもそういった事情を踏まえて、予想の出来る作業量などを鑑みて機能〜デザインまでを設計します。

このように私なりには計算してちゃんと設計しているのでダメなものを作っているつもりも無いし、愛着もあります。しかしあえて言わせていただくと、ネットショップというのは所詮は単なるツールなのです。

ツールですから、それを使いこなす使い手(ショップ運営者)が存在して初めて意味を成します。

ハイクオリティなデザイン、売れる仕組みやシステム、つまりは見た目も美しく高機能なマシーンというところでしょうか。でも、これらは使い手あってのはなしですから、「弘法筆を択ばず」という言葉もあるように、中身の伴わないものに対していくら最上級のツールを用意しても「猫に小判」という事になりかねません。

売れるショップの原因について詳しく

さっきの件は小売りの本質と言うか、めちゃくちゃ当たり前感がありますが、1つ1つ少しだけ補足を

  • 商品力
    商材によって性質は変わるものですが、少なくとも同業他社のそれと比較して優れているか?近年ではこれがかなり「価格競争力寄り」になっていると感じます。乱暴な言い方すると、安ければ良いというところで本来の商品力というのが薄れている印象です。いいものがたくさんあるってことの裏返しですかね。
  • 価格競争力
    ネットショップはもっとも価格比較が容易にされてしまう販売チャネルです。同じ商品が他社より高い場合、自社より安いショップの存在に気付かれない事を祈るだけ。
  • プロモーション力
    この言葉が意味するものは幅広いですが、1つ単純なものを挙げると「広告宣伝費」でしょうか。売れているショップは広告宣伝にかなりのコストを投入しています。もちろん、その他の要因でそのショップや商品が優れている事が世間に認知されているため、宣伝の必要もないものもありますが、そこに行き着くまでにはかなりの時間を要する(要した)はずです。そこまでは形は違えど、世間に認知してもらう為の努力やコストは投じる必要があるのではないでしょうか。
  • サービス力
    この言葉も意味は広いので語弊を招く恐れもありますが、1つ挙げるとすると実質的な顧客対応の質もそうです。ネットショップは自動販売機ではないですから、対人へサービスが必要です。もちろんシステムである程度合理化出来るものもあるでしょう。しかし根底にはそういう対人へのサービスを提供するという受け皿があることが前提です。質問への回答が丁寧だった。迅速な対応が受けれた…などなど。これは中の人のサービス力が鍵ですね。
  • 早くからはじめてた力
    残念ながら、先駆者というのははどの世界でも圧倒的に有利です。後発が追いつけ追い越せは容易ではありません。既に同業他社に先を越されているのであれば死に物狂いの努力が要求されます。ユーザーにとって後発によほどのメリットが無い限り、わざわざ乗り換えはしてくれません。

ネットショップが魔法のツールの時代は終わった

インターネット黎明期と言われていた頃にいち早くネットショップを始めていた方々はその魔法の力に魅了されました。インターネットでモノを売る。今までそんなもの無かったけどやってみたらなんと本当に売れてしまう。そんな時代がありました。

そういう事実が世の中に伝わっていくなかで、それを誇張表現するような情報や書籍、情報商材などの影響もあってか、多くの人が「ネットショップ運営=簡単ににボロ儲け」という公式を信じてしまったような気がします。

終戦後の日本ではモノがないから作ったらとにかく売れたというストーリー(アシックスの創業者の話を確かベンチャー通信で読んだと思って調べたらあった。これ)があるそうです。ここまで極端ではないと思いますが、インターネット黎明期のネットショップというのはそれと似たような現象だったのかもしれませんね。

これは私自身の経験談です。今から10年前、既に私はネットショップを利用していました。当時はまだネットショップの存在はそれほど一般的でもなかったので、ネットで買い物をしたなどという話をすると驚かれていたくらいです。さて、そんなに当時に私のお気に入りだったのが「カルバンクラインのボクサーブリーフ」でした。当時はこれを売っているところがすごく少なかったんです。

多分雑誌か何かの影響で欲しいと思ったのでしょう。百貨店に行っても少しだけしか置いていない。私は当時はやせ形だったのでSを購入して帰宅、早速履いてみるとブカブカ。そう、これはアメリカサイズのSで日本人にはまだデカかった。別の機会に再度百貨店に行ったけど、それより小さいのは無かったのです。

そんな頃にインターネットで見つけたのが「日本人サイズに合うカルバンクラインのXSサイズ」だったのです。この表現は曖昧な記憶で書いているので多分違うと思います。。そもそも当時はそんなに気の利いた表現をしたいたとは到底思えないのですが、とにかく説明的にはそんな感じでした。いずれにしても探していたものをやっと見つけたという感動は覚えてます。今となってはどこでも売っている商品です。そのショップはどこだったかなんかは忘れてしまいましたけどね。

そんな感じで少し手に入りづらいものなんかであれば、ネットショップにちょっと置けばそこそこ売れていた時代がありました。もちろん当時はネットショップ利用者人口も少なかったので今と同じで語る事は出来ないですが、当時の方が「とりあえず売れていた感」は多くのネットショップオーナーさんとの話で聞いているので間違いはないのでしょう。今はネットショップ利用者数も増加していますが、それ以上にショップ数が増加しているので昔よりシビアになってきている印象です。

まとめ

ネットショップ構築の際にいただくご要望(売れるデザイン〜システム)も、多くのネットショップが乱立している現在のこの環境下で他との差別化を図りたいという気持ちの表れの1つだとは思います。しかし、WEB周りの進化は非常に早く、多くの優れたデザイナーの存在、そしてシステムも高機能化し、それらが比較的安価に手に入るようになった現在においては、ある程度標準化されてしまったデザインやシステムに依存した形での差別化は非常に困難だと言えます。

魔法の時代は終わったこと、デザインやシステムは皆がほぼ平等に標準的な条件で手に入るので、そこでは差別化が困難であることを認識し、小売りの本質的な中身に目を向けた姿勢が必要なのでは?と感じる今日この頃です。

最後に少し古めの本(2008年)ですが、これからネットショップ運営を始めようかと考えている方には一読頂きたい書籍を紹介します。WEB周りの情報は変化の速度も速いので都度最新情報を取り入れる必要がありますが、こちらの書籍は最新の情報うんぬん以前の根本的なことに気付きを与えてくれる書籍です。普遍の真理的な内容(たぶん)ですので、情報が古いんじゃない?なんてことには囚われずに入門書として是非読んで頂きたいです。インターネット黎明期にはびこった「ネットショップでボロ儲け」的な迷信をちょっとだけでも信じちゃってるかも?と感じるのであれば、こちらを読んで今一度決意を改めて頂けると幸いです。